
| 2003.6.28 「突然の出会い」 |
| 釣行データ | |
| 日時 | 2003年6月28日(土) 9:00〜11:30 |
| 釣り場 | 南アルプス 某川 |
| 天候・気温 | 雨、気温未計測 |
| 水温・水質 | 未計測 |
| タックル | Rod
BUSH MASTER 5'9" #3 Real HARDY MARQUIS #4 Line 3M ULTRA3 YamameLine DT3F Reader TIEMCO BUSH MASTER 5X-7.4ft Tippet VARIVAS 6X-8X |
| 釣果 | イワナ 15尾(32cmヤマトイワナ含) |
| フライ | アント#16〜22 |
前夜から降り続く雨も朝になり少し落ち着き初めていた。ただ、南アルプス山頂付近は黒い雲で覆われていて今後も天候の変化は十分予想される。当初予定していた南アルプスの渓上流部は雨で濁りやすいため、昨夜のまとまった雨で状況は悪そうだ。比較的雨に強い沢にポイントを変更し車を走らせた。午前8時と渓流釣りには遅い時間ではあるが、渓は案外空いていてポイントの選択支は十分あった。目的とした沢の出会いに車を止めた。ザックに食料と水を入れレインウェアをはおり山道へと歩を進める。気温自体は少し肌寒さを感じるくらいだが、湿度があるので少し体を動かすと汗が出てくる。雨は強まったり弱まったりと安定しない。ただ、川の流れは増水も濁りもないのでドライフライの釣りは十分可能だった。 一汗かいて目的のポイントに到着。時間はちょうど午前9時。ブッシュマスター5'9"を継ぎ、雨対策用のフォームをインジケータにしたフローティングニンフを結ぶ。浅い流れが続くが雨で水面が乱れているので、フォームを使ったフライは視認性も浮力も十分。なによりメンテをせずとも釣り上がる事が出来るのでなかなか具合も良い。釣り初めて30分は全く反応がなかった。昨年の状況では、この付近の魚影はかなり濃かったはずなのだが・・・。まだ先はあるので、一旦渓から上がり少し上流へ移動する。 この辺りから木が覆いかぶさりブッシュ地帯となる。ブッシュマスターの本領発揮といったところだ。ガレ場を降り川にいきなり立つとヒラキに居た良型イワナ数尾の魚影が走った。やはり釣り難い場所には魚が残るものだな。今度は注意して静かに腰を低くして遡行する。リーダーティペットも詰めてピンポイントキャストに徹する。昨夜巻いたフォームアントを落ち込み脇に置くとバシャっとイワナが待ち構えていたかの様な素早い反応を示した。キャッチしたのはヤマトイワナ。オレンジの朱点も色濃く出ている。その後も反応は上々だったが型が出ず20cmに満たないイワナを5尾キャッチ。その内1尾がヤマトで、あとは混じりという結果。結構苦労して厳しいポイントにフライを入れているのになかなか苦労が報われない。 ブッシュ地帯を抜けると少し上が開け多少釣り易くなる。この辺りからフラットな流れが続くので遠めのアプローチが要求される。ブッシュマスターは近距離専用と思われがちだが意外と遠投も利く。タイトなループを作って狙ったポイントへ打ち込む。白泡の切れ目に着水し流れの筋をフライが漂う。大きい沈み石の手前で期待通りにイワナが飛び出した。快心のヒットと呼べるかもしれない。大型魚の感触ではないが力強い引き、ナイスファイトだ。キャッチしたのは8寸には少し足りないヤマトイワナ。でもよく見ると体側にわずかな白点が混じっているのが気になる。背に白点があるかがポイントとなるので、このイワナは背の白点は無いことからヤマトと呼んで良いものと私は判断した。こんな事ばかり考えていると少し嬉さも半減してしまう。だからと言ってこのイワナが私に与えてくれた心地よさの価値は変わるものではない。静かに水に戻し感謝。雨は相変わらず降り続いているがだいぶ弱まってきていて、午後には回復しそうな感じだった。谷に暖かい湿った風が流れている。釣れそうな雰囲気。魚影は確保されているようで各所で反応がある。そこそこ釣れるので飽きはこないのだが型が出ない。大場所でも小型イワナが出てしまう始末。7尾連続で20cm未満だと気合も抜けて惰性で沢を釣り登っていた。時計を見ると11時を回っていた。型が出ないだなんだと文句も言いつつも黙々と釣りをしていた訳だ。 小さな淵があった。流れが細く底まではっきりと見えた。そしてその流れに揺らめく魚影も。型は目測で8寸くらい。今日の中ではいい型の部類。これは是が非でも取ろう。ティペットは8X、フライも18番に落とし万全の体制で臨む。石の影に隠れこちらの気配を消す。流れ込みからフライを流す。イワナの反応を見るが全く無視。底に付いたまま浮き上がる気配を見せない。イワナに無視されたフライをしばらく漂わせていると、小さなイワナがフライを突付きにきた。これを釣ってしまうと場が荒れるので、食いつく前にピックアップ。危ない危ない。何度も何度も投げるが全く無視するイワナ。 フライを22番のマイクロアントに切り替える。これを無視されると後は沈めるしか手が無い。「出ろ出ろ」と祈るような気持ちで流れのフライを凝視。すると流れの中に沈んでいた木の陰から何かが動き水面に静かな波紋が広がった・・・。一瞬の事で頭が理解するより先に体は動いていた。ギュんと曲がるロッドティップからライン、リーダーが一直線に水面に刺さっていた。狙っていたイワナなのか別のイワナなのか半信半疑だった。魚は意外とおとなしく、こちらの意のままに数メータまで寄せていた。岸によっていたのでこのまま岸に上げた方が無難かなとグイっとロッドに力を入れた途端、激しい水飛沫が上がった!。 その時見たのは狙っていたイワナではなく、二まわりくらい大きく丸々と肥えていた。これは間違いなく尺イワナ!。それまでおとなしかったのが一変し、激しくダッシュして底へ向かって潜りだした。強い。ロッドがギュっと絞り込まれる。ティペットが8X。フライも小さい。無理をすると切れるか、フックが外れてしまう。水面に刺さっている細い糸がいかにも頼りなく感じられる。予想外の大型魚との出会いに困惑し舞い上がっていた。「落ち着け、落ち着け!」10回くらい唱えたと思う。イワナに余計なプレッシャーを与えず徐々に距離を詰めていた。イワナはすばらしいファイトで抵抗する。なだめるようにゆっくりとなんとか取れそうな距離まで寄せていた。意を決してネットを出す。あと30cmで・・・という時にイワナと目が合った気がした。途端に激しく水飛沫をあげ水面でうねった。過去の経験で一番バラしの多い瞬間。緊張が走る。イワナはネットを振り切り水面下に走った。バレは回避出来たようで一安心。ランディングは仕切り直しとなる。 先程の瞬間に確認したのは、オレンジ色の朱点をまとった完璧なヤマトの尺イワナであるという事。ヤマトの尺を釣ったのはもうだいぶ前の事になる。私の中では特別な存在のピークにあるモノなので、何か全身に熱いものが廻った感じがした。頭の中では、ティペットが切れる、フックが外れるなどバラす悪いイメージだけしか思い浮かばない。気持ちが負けていた。もう1度「落ち着け、落ち着け!」と唱え自分を鼓舞する。ブッシュマスターは案外粘りもあり、イワナの動きをコントロール出来ていた。再度のランディングチャンスは直ぐにやってきた。チャンスに3度目は無い気がする。これを外すと駄目だ。自分にプレッシャーをかけてイワナを寄せる。今度は一気にすくい上げよう。横になったイワナの魚体が近づく。緊張の一瞬。ネットとイワナが触れたとき暴れた勢いでネットの中にスポっと収まった・・・。 私は5秒ほど硬直していたかもしれない。そしてネットに収まった魚体を見て力がふーっと抜けていった。喜びが込み上げてきたのは、それからもう少し時間が経ってからだ。ネットを優にはみ出すヤマトイワナの魚体を見ていると、よくここまで大きくなったなーという感慨深いものを感じていた。デジカメの最高画質で数枚撮り終え、最後はメジャーで計測の儀式。もう尺オーバーは確実なのでドキドキはない。身体検査の様な面持ちでメジャーを当てる。32cmの所に尾鰭を確認し「ヨシ!」っと拳を握った。後は私のエゴから少しでも早く解放してあげる事を考えた。水に戻し尾鰭が指から離れていく時、名残惜しさを感じていた。次の出会いを期待してという気持ちではなく、もう二度と会えないのではという刹那的な感情が先走った。
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