プロローグ
広く緩やかな流れに赤やパープルのカラフルなフライが空を舞う。フルキャストしたシューティングヘッドが対岸の流れに消えて行く。細いランニングラインから伝わる震動をイメージしフライを底へと送り込む。そして、その魚体には似つかわしくないほどの小さなアタリ。その直後、悲鳴のように逆回転するリール。ダブルハンドロッドを大きく曲げこむ圧倒的な重量感。それが10分以上、時には20分と続く…。これがサーモンフィッシングの魅力であり醍醐味だ。
本州で本格的なサーモンフィッシングが楽しめる河川、石川県手取川。今年から山形県の寒河江川でもサーモンフィッシングが出来るようになったようで、手取川が本州唯一の河川ではなくなった訳であるが、手取川は今年で3年目の実績がある。何より私にとっては最も身近にサーモンを感じられるという意味でも特別に思い入れのある河川である。今年も9月初旬に手取川サーモンフィッシングに難関が予想される抽選に応募した。今年はどうせ行くなら泊まりで行きたいねと友人達と話がまとまり、11月8−9日の二日間を釣行日と設定。しかし、この日は金、土曜日という事もありその競争率は半端ではなかった。
渓流の禁漁迫る9月末。幸いなことに町役場から封書が届き、昨年に引き続き手取川でのサーモンフィッシングが叶うこととなった。難関を突破した事である種の達成感があり、11月に入ってもほとんど準備もせずのんびりしていた。フライも昨年のストックが十分あるので当たりフライを数本補充すれば良いはず。釣り方も概ねわかっている。釣りに対する不安はなかった。釣行1週間前になり同行のメンバーの参加が危うくなり、結局直前で不参加が確定してしまう。仲間内で代わりを探すが急に会社を休める訳もなかった。せっかくの権利を流すのも惜しいので、HPの掲示板で希望者を募集してみたところ金沢在住のしげさんから連絡があった。今回はその方に権利を譲る事とした。
11月8日(金)
いよいよ釣行日迫る…。今年は友人と二人での遠征となった。現地でしげさんと合流するという段取り。昨年は出発が遅かった事もあり、朝の貴重なプライムタイムを逃してしまったという教訓から、今年は十分余裕をみて午前1時に出発。小雨のパラつく中、長野道を北上、上信越道、北陸道と高速道路を乗り継ぎ石川県を目指した。特にアクシデントもなく釣り場の手取川に到着したのが午前5時。ちょうど4時間の行程となった。既に到着し仮眠中の車も多い。受け付けにはまだ時間があるので私達も1時間ほど仮眠を取ることにした。しかし、JRの陸橋が近くにあり貨物列車が15分おきに通過するので、その轟音に眠りを妨げられてしまう。
少し空が白みだしたので外に出る。気温は思ったほど低くはないが風が強い。しげさんに連絡をとると既に駐車場に来ているとの事。しげさんと無事合流。これで一つ肩の荷が下りた感じだ。午前6時半には受け付けの管理小屋も開き釣り人が並ぶ。タックルを見ているとルアーや餌釣りが多くフライはほんの一握り程度しか見られない。少し肩身が狭い。
午前7時の釣り開始が迫ると風はいっそう増し、15ftのダブルハンドロッドが風で大きくしなる。これが北陸の厳しい気候なのか。この条件はフライにはことさら厳しい。開始時間も迫るのでとりあえず準備を整え釣り場へと向かう。川を覗き込むと昨年よりもはるかに水が多い。そして少し濁りもあるようだ。しげさんの話では数日前まで雨が続いていたらしく、昨日久しぶりに晴れたらしい。今日もどんよりとした曇り空で小雨もパラつく予報。天候は期待できそうもない。こんなコンディションに直面すると、昨年釣ったという自信はガラガラと崩れ去り、釣れる気はほとんど失せていた。ただただ不安のみを抱えて川に立つ事となる。ポイントはJR陸橋〜美川大橋、その中間よりも美川大橋よりの昨年実績のある場所に陣取った。
午前7時、いよいよサーモンフィッシング開始。フライは昨年実績のあるオレンジゾンカーを16LBのティペットに結ぶ。今年新調した15ftのダブルハンドロッドに合わせてST12タイプ1の12mヘッドを使用する。しかし、事前に試し振りでヘッドの長さ調整をしてこなかった事と風の向きが右手から吹き付ける事もあって、キャスティングが全く思うようにゆかない。足元のラインは絡みだすし苛立ちは隠せない。それでも10分程やっていると昨年の感も少し思い出し短いレンジではあるが、いちおう様になり始めていた。そして、流しきったラインを手繰り始めた時に少し違和感を覚えた。ん?。無意識に竿先が動いた。そして、水に刺さったラインの先が大きく波紋を立て動き始めた。来た!。慌てて竿を立てる。ずっしりとした重量感を感じそれがサーモンであると確信した時、パンという音はしなかったがそんな感じで張り詰めたラインが張力を失った。
バレた〜。原因を探るべく回収してみるとリーダーの先に足したショックリーダーの結び目から切れていた。ノットの強度不足が原因だろうか。そして、釣れるとは思っていなかっただけに不意を突かれた感じだった。
しかし、あまり落胆はなかった。ヒットポイントはかなり近い。サーモンは近くにいる。失いかけていた自信が少し甦ってきた。自分の釣り方、フライは今年も手取川のサーモンに有効みたいだ。ただし、ラインシステムは見直すことにする。自分の技量では12mヘッドは扱いにくいので、ST11タイプ1の9mヘッドに交換した。ヘッドとロッドのバランスが良くなり格段に投げやすくなった。キャスティングレンジも増してゆく。そしてヘッドが短い事もありドリフトもイメージに近くなっていた。フライは先程と同じくオレンジゾンカーを使い続けた。
昨年得たサーモンの釣り方は、STヘッドをゆっくり沈めてサーモンの泳層を少しでも長くドリフトさせたいという意図があり、インターミディエイトのスローシンクSTヘッドを使用する。ノーテンションでフライとラインを沈め、下流に流したラインが少し張りかけてスイングしそうになったら、そこから更にフライを送り込むという感じで流す。その時にコツンという実に小さなアタリが伝わる。これがサーモンの繊細なアタリだ。サーモンの鼻っ面にフライを送り込むイメージを持つと良い。
昨年のイメージを思い出し「ここから更に送り込んで…」とロッドでフライを送り込んだ時、コツンと小さいアタリが伝わってきた。??
少し確信は持てなかったが、思い切ってアワセを入れ竿を立ててみる。ズシンとする鈍重な震動が伝わってきた。その直後、足元に垂れていたランニングラインがすーっと無くなり突然リールがギーっとかん高い逆回転音を響かせた。もの凄い勢いでラインが出されてゆく。1年前の光景がフラッシュバック。そう、この感じだ!。これがサーモンとのコンタクトの証。ランニングラインの半分55ydにマークした印があっという間にリールから出て行った。ヤバイ!走られ過ぎだ。遠く対岸で跳ねる水飛沫を見て焦りを覚えた。しかし、最初にラインブレイクした事もあって、リールのドラッグを強く締めこむ勇気がない。サケってこんなに強かったっけ? サケのファイトに困惑した。今年の方が竿が強いのでもっと楽に寄るはずなのに全く寄らない。頭の中が真っ白になった。とにかく巻ける時には一気に距離を詰めるべく高速でリールを巻き取った。そして、サーモンが走る時には少し走らせてはじっと耐えてサーモンとの距離を詰めていく。
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7:20 サーモンと格闘中
岸に寄せてもなおも走る
ロッドは15ftのアイザック |
そろそろ岸に上がってサーモンを寄せなければ。ここからが最後の正念場になる。今年は水位が高いこともあり岸によせてもなかなか岸にずり上げる事はできない。かなり苦戦する。そこで、近くにいたしげさんに巨大ネットでランディングをお願いする事にした。激しい飛沫の後、しげさんが大きな固まりを水から抜き上げる光景を見て、やっとこのファイトに終止符を打った。足がガタガタ震えていた。キャッチしたのはメスのサーモン。かなり銀ピカに近い。サイズは70cmはないが、この強い引きは昨年以上だ。今年は昨年よりも半月ほど早く釣行しているので、サーモンも凄くタフでパワフルなのだ。
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7:30 1尾目のキャッチ
チャムサーモン(メス) 68cm
ヒットフライはオレンジゾンカー
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先ずは1枚サーモンを抱えての記念写真を撮ってもらう。そして自分でサーモンの写真をと思いカメラを出そうとした時、サーモンが急に暴れ慌ててしまった。それを抑えようとした時、ベストのポケットに入れたはずのデジカメがボトンっと音をたて水に漬かっていた。慌てて取り出すが既に遅く完全に水没。長く使い込んだ愛着あるデジカメもいよいよ終わりの時がきたようだ…。
しかし、かなり興奮していたためか、それが残念という気分ではなく、むしろこんなアクシデントも気持ちを更に高揚させるイベントの一つにさえ感じていた。写真は友人のデジカメを借りて写すことにした。釣ったサーモンはメスという事で漁協指定の生簀に移し入れた。去年はオスしか釣れなかったの初めてのメスのサーモン。そしてなによりオスは検量の為管理小屋まで運ばなければならないので、メスはその手間がないの分助かる。
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1尾目のメスを抱えての写真
水没する前に撮った私のデジカメの唯一の1枚 (涙)
スマートメディアは生きていました |
釣り開始から30分で結果を出せたのはほぼ理想的な展開。まだ、周りではそんなに上がっていなかっただけに気分も上々。意気揚揚と釣り場に復帰した。1本釣れれば気持ちも落ち着く。きっとまた釣れるはず。なぜか妙な自信があった。先ほどと同じオレンジゾンカーを投入。その数投目。スイングしかかる直前、今度も鈍い当りが来た。間違いない!サーモンだ!。竿を立てロケットダッシュに備え心の準備を整えた。さあ来い。しかし、シューっという音で無音のままリールが逆回転していた。頭がパニックを起こした。かん高いラチェット音が鳴らない!。どうした!。リールが壊れたのでは? 私の混乱とは対照的にサーモンはもの凄い勢いで突っ走った。慌てて手でスプールを抑えブレーキを掛けてなんとか走りを止めた。しかし、リールの事が気になってやり取りに集中できない。対岸でジャンプする大きな水飛沫。そして無音で逆回転するリール。リールに頼る事が出来ないとなると自力でなんとかブレーキをかけつつ寄せなければ…。そして2回目のジャンプがあった直後、張っていたラインが水に垂れていた。あ〜バレた〜。
バレたことよりもこれからこの壊れたリールで釣りが出来るだろうか困惑した。とにかくラインを回収しリールのスプールを外してみた。ラチェットが壊れていて音がしない状態になっていた。ブレーキ自体は問題ないようだ。音がしなかった事にパニックしてドラッグを閉めこみが甘かったのが走られ過ぎた原因。いちおう応急処置を施してみたがやはり逆回転時にラチェット音はしなかった。この状態で解体すると部品を無くしそうなので、とりあえず音は我慢することにして、釣りに復帰した。
デジカメ水没、そしてリールも不調。普通なら相当へこむはずなのだが、1尾目のサーモンの感動が大き過ぎて、案外平然としていた。それよりもサーモンの雰囲気を濃厚に感じるこの時を逃したくないという気持ちが最も大きかったと思う。無音のリールからラインを引き出し、先ほどと同じレンジまでフライを投入し流れの中に送り込んでいった。
数投目。またコンという当り。これもサーモンだと確信しアワセを入る。15ftのダブルハンドロッドが大きくしなり、シュルシュルと水面下にランニングラインが引き込まれていった。無音で逆回転するリールに違和感を覚えつつも最初の走りは止めた。そして、巻き取り何度か走られを繰り替えている時にブルンブルンとえら洗いの様な仕草をサーモンがした直後にすっとテンションが抜けてしまった。またバレた〜。こんな状態が何度か続く。
バレても悔しさはなかった。また釣れるはず。もう完全にはまった感があり、根拠はないが必ず来るという絶対的な自信があった。とにかくフライはオレンジゾンカーで当っている。釣り方に間違いはない。あとはヒット後の対処の仕方が問題だ。全ての状況を受け入れ
、頭でキャッチまでのイメージをトレースした。
そして、投入直後、またしても鈍いアタリ。ヨシ!、自信をもって強いアワセを入れた。ダブルハンドロッドが大きく曲がりこんだ。今度は至って冷静だった。無音で逆回転するリールにもなれ、あまり走られずにサーモンとの距離を保った。水面に出た魚体は腹が白い。メスに違いない。竿をたて十分しならせてサーモンを寄せてくる。今までバレたのは竿を寝かせ過ぎだったかな?
サーモンの走りにもドラッグを調節し対処する。しっかり口にフックセットされたのを確認し岸に寄せてくる。さすがにタフで早々には岸に上がる気配を見せない。やはり15ftと竿が長いので取り込みが難しい。昨年の12ftロッドとは勝手が違う。なんとか岸に上げて本日2本目のメスのサーモンをキャッチ。サイズは65cmくらいだが銀ピカの美しい魚体は特筆に価する。当然だがヒレは尖っている。惚れ惚れする魚体に大満足。正直、持って帰れるならこの魚を持って帰りたいほどにコンディションは抜群だった。でもメスは漁協の生簀にということなので、少し惜しみつつも生簀に入れた。
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8:10 2尾目のサーモンをキャッチ
バレが続いただけに嬉しい1尾
チャムサーモン(メス) 66cm
ブナもほとんど出ておらず銀ピカの美しい魚体
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時計を見るとまだ8時を少し回ったところ。1時間で2本キャッチ。バラシなんかもあったし、ほとんどの時間をなんらかの形でサーモンとコンタクトしていた事になる。上出来だ。休憩も兼ねて仕事中の友人に電話する。「仕事中悪いね〜。爆釣中だよ〜。帰ったら写真送るね〜。」彼がその後どんな気分でいるかは、その時の私には全く想像できなかった…。
同行の友人はと云うと少し苦戦していた。初めて扱うダブルハンド、そしてサーモンの釣りに困惑している様子。それでも黙々とキャストをしている。どうやって釣ればいいのか正直わからないのだろう。昨年の自分を見るようだった。アドバイスめいた事は言わなかった。言葉で言ってもきっと伝わらない。自分の感覚で体に刻み込むしかないと思う。時がきっと解決するはず。
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8:20 友人に待望の1尾がヒット
15ftロッドがかなり曲がってます |
そんな友人の竿が曲がった。いよいよ来たか〜。自分のラインを回収し彼のファイトを見守る事に。友人の初サーモン。心臓は高鳴っている事だろう。見てるこっちさえドキドキしている。リールの逆回転音が彼の脳裏に刻み込まれてゆくはず。本人いわくスレじゃないかという。私はスレではないと思う。サーモンがあまりにタフなのでそう思うだけなのだ。10分後、サーモンを岸に上げることに成功。彼の初サーモンはメスだった。バッチリ口にフックセットしていた。今まで写真を撮ってくれていたお返しに私も彼がサーモンを抱える写真など数枚を撮った。嬉しい1本。
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チャムサーモン(メス)
友人のヒットフライ
やはりオレンジゾンカー
オレンジ当たってました |
さて、自分の釣りをしよう。8時半を回り周囲の釣果も落ち着きはじめていた。やはり、プライムタイムは早朝ということに間違いはないようだ。小雨が降ったり止んだりを繰り返していた。風も右手のフォローになっている。ダウンクロスに投げるには丁度良い。釣りに慣れてきたこともありキャスティングレンジはだいぶ伸びてきた。毎回キャスト後、リールがジッっと鳴る。そう、この頃はなぜかリールのラチェット音が治っていたのだ。しかし、リールからラインを引き出すと鳴らなかったりする。たぶん微妙に調整がずれているのだろう。
しばらくすると友人の竿がまた曲がっている様子。またヒットかぁ。と思った時、私の竿にも鈍いアタリが…。隣同士のダブルヒットとなった。友人のファイトを気にしつつ、自分のファイトもする程に余裕があった。友人の掛けたサーモンも私のサーモンも共に腹が少し赤みを帯びている。たぶん、オスだろう。オスは2本釣った時点で定量に達し釣りが終了となってしまうので、できればメスを釣り続けた方が長時間楽しむことが出来る。メスの方がいいのだが、オスの引きはメス以上にパワフルなので掛けて楽しいのは断然オスだ。そこで微妙な心理が働くわけだ。まあ、選んで釣れるほどの腕もないので運を天にまかせるしかない。オスはジャンプしたり激しくえら洗いしたりと何もかもが豪快でそのファイトに心臓の鼓動が高鳴ってしまう。リールの逆回転音は相変わらず鳴ったり鳴らなかったりを繰り返すが、ある程度の距離は保ちオスのサーモンの引きに耐えていた。
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8:40 3尾目のヒットはオス
チャムサーモン(オス)
73cm 4.0Kg
サイズ以上の引きをします
ヒットフライはオレンジゾンカー
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友人の方が最初に決着をつけたようだ。私もドラッグを締め込みリールを巻きあげて岸に寄せた。10分以上のファイトを堪能し腕はもうパンパンになっていた。サーモンの圧倒的な重量感、そしてパワフルな走り。全てに魅了されていた。明らかに今までのメスよりは大きかった。釣ったオスは管理小屋で検量することが義務付けられているので、友人と検量に向かう。この際、軍手を持っていると大変重宝する。魚が滑らないので持ちやすい。大きなタモに入れて持つよりは運びやすいと思う。検量してみると友人の方が少し大きいようだ。共に4Kgちょっとだったと思う。
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3尾目のサーモンを抱えての写真
イトウ みたいに見えるけど、ちゃんとサーモンです
(笑)
大きく見えますね
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釣り場に戻った時、しげさんのロッドが曲がっている最中だった。いよいよ来ましたか〜。2年越しの初サーモンなので嬉しさは格別だと思う。しげさんの大型ネットを借りてランディングをお手伝いする。やはり、メスのサーモンだった。朝は圧倒的にメスが多く釣れていた。
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しげさん
待望の初サーモン
2年越しのキャッチ
バックを川にして写真を撮ると雰囲気でますね
やはり、オレンジゾンカーが当り |
時間は9時だった。まだ2時間しか経っていないのにもう昼くらいの感覚でいた。それだけ充実した2時間であったと云える。晴れ間が差し込んできた。レインウエアを脱いで、ひとまず休憩することに。3人全員サーモンをキャッチ出来た事を祝し、昨年の例に習いワインで乾杯〜。渋みのある赤ワインが妙に上手かった。ボトルが空きかけた頃、酔いも周りほろ酔い加減になっていい気分でいると途端に空が暗くなりだしたと思ったら突然の雷鳴。気がつけば周囲の釣り人はスーっと消えていた。皆、雷に敏感なのだ。私は結構気にせず釣りをするタイプなので、その反応の速さに驚いた。雷は近くはないので、そんなに焦らなくてもと思ったが釣り場には私達しかおらず、雰囲気的にヤバイ感じになっている。じゃあ戻りますかぁ。と車まで戻る途中に一気に土砂降りになった。北陸の天気は変わりやすい。
橋の下でしばらく雨宿りをすることに。雨はかなり強く、雷も地鳴りの様に響いた。この状況では釣も中止かも知れない。朝、しっかり釣果が出せたのが幸いだった。最悪はこのまま宿に直行でも仕方ないかと諦めて雨の上がるのを待った。11時くらいに一旦雨が上がり釣り人が川に戻っている。私たちは車に戻り少し早い昼食とした。風が冷たかったこともあり温かいラーメンは実に上手かった。しばらく強い雨が降ったり止んだりを繰り返す。正午をまわり空から明るい日が差し込みだした。友人と釣り場に戻ることにした。
3時間ぶりの釣り場復帰となるが、コンディションは大きく変わっていた。強い雨が降った影響で支流から流入する濁り水が入りっている。水位もだいぶ上昇しているようだ。既に釣っていたフライマンに話を聞くとさっぱり活性が落ちたらしい。しげさんも同様の話だった。先程までの雨で帰ってしまった人も多かったらしく釣り場はだいぶ空いていた。朝のポジションに入ることが出来リールからラインを引き出し釣りを再開する。
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午後になり濁りの入った手取川
ツーハンドロッドを振るフライフィッシャーが並びます
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濁りが入り活性が低くなったというのは確かで、朝の状態なら最低でも10分に1回程度はサーモンとなんらかのコンタクトがあったのだが、今は1時間以上もキャスト、ドリフト、リトリーブを繰り返すが全くアタリが感じられなかった。濁りが入ったことでサーモンがフライを見付けにくくなったのかも知れない。近くでも時折モコっと水面に顔を出す光景を何度も見ており、活性が落ちたとはいえサーモンは確実に私達の近くまで寄っていた。
作戦を変更。今まではとにかくフルキャストで遠くまで投げて釣ることばかり考えていたのだが、近くにいるサーモンに対して手返し良くアプローチし続ければなんらかの反応があるのではと思ったからだ。フライのカラーも昨年出番のなかったイエローゾンカーを結ぶ。昨年の経験でもフライのカラーを交換してからの反応は良くなるので、期待を込めてミドルレンジにフライを投げ入れた。小さい範囲をドリフトしスイングさせて何度か流した時、やはりスイングに入る直前に小さいアタリがあった…。
既に体がサーモンのアタリを覚えたようで、さほど意識せずともばっちりとアワセを入れていた。リールがギーっと悲鳴の様に逆回転する。休憩中にリールを調整したのでラチェットも直っている。やはりこの音がしないとサーモンを釣っているという雰囲気も出てこないし何より心地よさがないのだ。リールの逆回転音に酔っていると、ランニングラインの余裕が無くなってきている事に気づく。既に100m近く走られているかも知れない。遠く対岸で激しくジャンプする大きな魚体。自分はあの魚を釣っているのだろうか?それがラインを通し繋がっている事が凄く不思議に感じられた。度重なるリールファイトでリールのドラグが少しヘタっている感はあるが、サーモンのファイトを十分止めるだけの能力はまだ残っているらしい。リールの性能を信じリールにサーモンの重みを委ねた。どのくらいファイトしただろうか。ダブルハンドロッドを持つ手を右、左と交換していたが腕がパンパンに張ってきていた。岸近くに寄ってもまた奥に走られてしまう。なんとか岸まで寄ってきたその魚体はかなりいいサイズのオスだった。これで定量か、時計をみると1時半だった。まあ丁度いい頃合いだ。ロッドで岸に上げようと思ったが全く上がらなかった。動かないと表現した方が良いかもしれない。昨年のはもっとすんなり上がったはずなのに…。15ftのダブルハンドロッドを思いっきりしならせてもその魚体は岸に上がる気配を見せない。サーモンはまだ余力を残しているのか、時折激しいダッシュを見せリールのドラグを慌てて緩めたりした。全くラチがあかないファイトに周囲のフライマンからもいろいろアドバイスをもらうが、相手がまだタフなだけにそうそう思うようにはゆかないのだ。周囲の人達の力を借りてなんとかオスのサーモンを岸に上げることが出来た。かなり立派な魚体でメジャーをあてると85cmを余裕で超えている。腕がプルプルしていたが抱えての写真を撮り検量へ。検量ではだいたい自測より−5cmくらいになるので、このサーモンも80cmだったが、5Kgをちょっと超えており昨年釣ったオスより少し重かった。このくらいのオスは立派なもんだと漁協のおじさんのお墨付きをもらった。お世辞もあるだろうけどやはり嬉しいものだ。
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13:30 4尾目のサーモン
強烈な走りでした!
チャムサーモン(オス)
80cm 5.03Kg
2尾目のオス(定量)
これでストップフィッシング!
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いかにもオスらしいワイルドな
面構えのサーモン
さすがに5Kの重さを抱えるのは
重い! |
オス2本釣った時点で定量に達しストップフィッシングという事で、私は残りの時間は余裕の観戦モードで友人の釣りを見物することに。見ていると何度かアタリもあるし、フッキングもさせている。キャッチこそ出来ないが反応を見ているだけでも退屈はしなかった。水位は更に増し、それほど立ち込んでいた訳ではない友人が見る見るディープウェーディングな状態になっていった。少し明るかった空がまた黒い雲に覆われだした。ポツポツと小さな雨が降り始めた。レインウェアのフードをかぶり友人の釣りを見ていた。3時には終了との漁協の人のアナウンスもあり、あと10分くらいかと思った時、友人のロッドが大きくしなった。リールが凄い勢いで逆回転している。凄いダッシュだった。リールのドラグは最大限に締めこんでいるというが、その走りは止められなかったようで、止まる事なくサーモンは下流に走った。その前にスレ掛かりで釣った人のファイト見ていたのでもしや?と思ったが、友人もスレだ〜と叫んでいた。口に掛かっても凄いファイトなのにスレ掛かりとなるとそれは凄まじいことになる。これからどうなるか見物だな。頼りないくらいに細く感じる1本のランニングラインが遠く下流の先に刺さっていた。その先だいぶ下流にサーモンの激しい水飛沫があがる。しばらくすると、その張力はフッと失せてしまったようにダラんと水面に垂れていた。外れてしまったようだ。残念。やはり、サーモンをキャッチするにはあまり走らせないである程度の距離を保つ事が大切だ。
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終了目前、友人のロッドが大きくしなる
下流に走るサーモンに耐える |
午後3時、朝の混雑が嘘のように釣り場には数人のフライマンしか居なかった。皆黙々とロッドを振っていた。パラパラと小雨が水面を叩いていた。そろそろ終了となる。一人がリールを巻き上げると、他の人も合わせたかのように皆リールを巻き上げた。手取川サーモンフィッシングの終了である。
本日の釣果は、私はオス2本、メス2本。友人はオス1本、メス1本。しげさんメス1本。皆キャッチ以上にフッキングは多く、サーモンのファイトを楽しめた事だろう。今日はフライフィッシャーはかなり健闘したと思われた。明日は今日よりも気温は10度以上下がり雪が降るであろうという大荒れの予報。明日は相当厳しくなると思われる。今日のようにサーモンとなんらかの関わりをもてれば幸いだと思い本日宿泊の宿「沢の家」に向かった…。
11月9日(土)
夜中に地鳴りのように響く雷で目がさめた。旅館の若女将からこの辺りはよくある事とは聞いてはいたが、それは想像以上で地震かと思うほどに床が揺れたので慌てて起きてしまった。そんな雷が3回続いた。外は大荒れなのだろう。
朝6時にセットした目覚ましが鳴る。昨夜は疲れていたこともあり、友人とさほど深い酒は飲まなかったが体調はあまりよくない。なにより腕が重い。完全に筋肉痛だ。馴れないダブルハンド、そしてサーモンとの強烈なファイト。腕に残る感触が思い出される。今日もあの引きが味わえるのだろうか。旅館で用意してもらった朝食の握り飯を持ち釣り場へと向かう。
美川大橋を車で渡ると川はまっ茶色の濁り水だった。昨夜かなり雨が降ったらしい。この光景を見てしまうと一気にやる気は失せてしまう。そして、日本海は大荒れの模様。やはり今日は大荒れのタフコンディションだった。しげさんも既に駐車場に到着している。合流し管理小屋で受付を済ます。漁協のおじさんから今日は天気が崩れるから7時を待たずに直ぐに釣ってきなさいと言われる。準備を終え釣り場へ移動。気温も予報どおり低く風も強い。そしてなによりも増水と濁り。自然が相手だけに何に怒りをぶつけられるでもなく、この状況を素直に受け入れざるを得なかった。
こんなコンディションでも昨日よりも釣り人は多かった。さすがに土曜日だ。隣の人との間隔を空けてもルアーマンは無理やり割り込んでくるし、正直言ってマナーはかなり悪かった。釣りよりも人への気遣いで精神的に疲れてしまう。次回は休みの日は避けたほうが良いかも知れないと痛感。釣果の方は予想通りというか私も友人もさっぱりだった。周囲も沈黙していた。たまにルアーマンがスレで掛けている程度だ。この濁りはかなりタフコンディション。
実は昨日から大物釣り名人の細山長司さんが釣りをされていた。昨日はさすがに名人は爆釣しており、長い本流竿を駆使しサーモンの強烈なファイトをほんの数分で取り込んでしまう技術はさすがなものであった。おそらくサーモンを岸に向けさせそのその勢いで岸に上げてしまうのではないか。僕らが10分、20分と長時間をかけてサーモンをある程度弱らせないとサーモンをランディング出来ない事に対し、名人はサーモンがまだ元気なうちに取り込んでしまう。これは是非とも見習いたい技術だ。そんな名人も今日のコンディションには勝てないらしく、さっぱりだった。そのお弟子さんらしき人はあげていたが、かなり岸に近い場所を流している様子。近くにもサーモンはいる。無理な遠投より近場を丹念に流そうとラインシステムをタイプ4にしてフライを短時間にサーモンの泳層まで沈めるようにした。
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二日目の手取川は濁りがキツイ
←大物釣り名人 細山長司さん
長い本流竿もしならなかった
(カニは釣っていたけど...) |
川が増水したことで今日はゴミが多く流れているらしくスイング途中にビニール袋や挙句の果てにはプールの浮き輪のつぶれたのやらを引っ掛けてしまう。一瞬サーモンが来たかと勘違いするほどの手応えをみせた。またゴミがなと思ったその時、グググっと上流にラインが動きだした。慌てて竿を立てる。ブルブルっと振動が伝わる。サーモンが来た!。ラインを巻き始めたその時フッと負荷が無くなり無機質な感触しか残っていなかった。バレた〜。痛恨のアワセミスだった。昨日ならあまりバラシも気にならなかったが、この状況では実に悔やまれる。友人も粘っているがさっぱりアタリはないという。私もその後は全くアタリがなかった。
午前9時半。まだ旅館をチェックアウトしていなかったので、一旦旅館に戻らねばならなかった。一旦道具を仕舞いウェーダーを抜いて旅館へと向かった。この時点で僕らの決心は決まっていた。朝のあの濁りを見た時、友人と2時間半やってダメなら上がろうかということで話がついていた。今日は雪が降りそうだという予報もあったので、遅くとも昼間でには上がるつもりでいたが、このコンディションは上がる時間をさらに早める事となった。
世話になった旅館の皆さんに挨拶し一旦釣り場に戻った。でも、もうウェーダーは履く気にはなれず、まだ釣り場で頑張っているしげさんに挨拶しにいくのみだった。昨日の釣果で十分サーモンフィッシングは満喫できたので釣りに対しての未練は全くなかった。二日間お世話になったしげさんに頑張って釣って下さいとご挨拶し釣り場を後にした…。
帰りに道の北陸道の荒れた天候は凄まじいものだった。大荒れの海から吹き付ける横殴りの強風にハンドルを持つ手も汗を感じるほどだ。そして、新潟と長野県の県境は時期的にも早い20cmほどの降雪。今日は早々に上がって正解だったかも知れないと友人と話した。
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今年のヒットフライ
オレンジゾンカー
TMC9394 #2 (ソルト用)
かなり重めにしてます
目玉がポイントかな?
※ 新しく買ったデジカメで撮影 |
今年のサーモンフィッシングを総括すると、まず、初日は多少の濁りはあったもののサーモンの活性が高かったらしく、サーモンを何尾もフックセットさせられた。またそのファイトも実にタフでリールが壊れるという貴重な経験もした。やはり早期の遡上サーモンは、パワーも素晴らしいものがあった。昨年以上にサーモンフィッシングの魅力を存分味わうことが出来、大満足の釣果だった。そしてなによりも釣り方やフライについて、自分なりに得たものが手取川のサーモンには確実に有効である事を確信できた事は何より嬉しい事だった。ちなみにこの日上がったサーモンは93尾。一人平均1.5尾という計算になる。
しかし、二日目は悪コンディションで厳しい釣り。前日の半分の42尾という結果だったらしい。もしかするともう少し粘れば釣れたかもしれないが、前日にいい想いをしているだけにあの状況には耐えられなかった。でも元々は忍耐の釣りな訳で、もうちょっと辛抱せねばならないかなとも思う。今年の北陸は天気が良くない日が続いてコンディションはあまり良くないらしいが、それも自然相手と割り切り頑張るしない訳だ。様々な条件に対応出来るシステムを準備しておくべきであろう。2年目という事も有ったがやはりサーモンのファイトは素晴らしく、その引きに新たな感動を覚えてしまう。やはり、サーモンの引きを1度でも味わってしまうともう後戻りは出来ないような気がしている。また来年もこのフィールドに立てる事を祈り手取川を後にした。
// 完
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