2002.9.28「希望の渓」
 
釣行データ
日時 2002年9月28日(土) 16:30〜18:00
釣り場 南アルプス 某川
天候 曇り
気温 未計測
水温 未計測
タックル Rod    CFF RightStaff 8'4"#2
Real   MARRYAT MR7A
Line   3M Ultra3 Yamame Line DT2F
Reader  VARIVAS 5X-12ft
Tippet  VARIVAS 5X-3ft / 7X-3ft
釣果 ヤマトイワナ 8尾(29cm〜20cm)小さいのはカウントせず
フライ エルクヘアカディス#12 ソラックスダン#14 パラダン#16


9月末というのは、なにかと忙しい。仕事も期末で子供の学校行事もある、また実家は稲刈りと休日はあってもほとんどが消えてしまう。自分にとって一番の関心事、渓流禁漁目前という事は、いろいろ考えるとそのプライオリティは必然的に低くなってしまう。まあ、毎年の事なので諦めもつくが、今年は夏からあまり釣りをしていなかったので、さすがにこのまま終わってしまうのはどうにも釈然としない。土曜日ながら出勤していた午後、いたたまれずに社を抜け出し車に乗り込む。行き先は南アルプス。そこしか考えられなかった。

昨夜から降った雨も午後にはあがってしまったようで、夏から続く渇水を解消するには至らなかったようだ。南アルプスへ向かう林道を走るのも久しぶりに思える。禁漁目前の土曜日というのに案外釣り人の車は少なかった。しかし、私が狙っていた有望と思えるポイントにはしっかり車は止まっている。頭の中でデータベースを展開する。釣り人がいたらエスケイプ出来ることを考慮し1番から3番までの候補をあげた。

長い林道を走り第一の候補地に到着した。幸いな事に車がない。夕方を目前にして車がないということは、この奥は一応貸し切りということになる。期待も膨らむ。支度を終え山道を登り始めたのは午後3時半。これから小1時間ほどの山歩きになる。
さすがに9月末ともなれば、少々の山歩きでも汗は出てこない。谷を吹く風が強く少し肌寒さも感じた。山の木々はまだ秋の装いには少し早いが、秋を感じさせる独特の空気はそこにあった。山道と渓流が少し近づいてくる。水の流れる音は弱かった。渓は酷く渇水していた。釣りになるだろうか、不安が過ぎる。

パックロッドを継いで流れに近づいてゆく。細い流れに小さなイワナが見えた。安心はしたがさすがにこの魚は釣る気にはなれなれず、少し上流へと移動する。深くはないが小さな落ち込みを形成していた。狙いは白泡周り。しかし、風が強く思った場所にフライが落ちない。2番タックルであった事を少し後悔する。何投目かで狙ったポイントに入った。すかさず反応がありフライが沈んだ。しかし、あまり引かない。久しぶりの釣りだから贅沢な事は言わないけどもう少し大きいと嬉しいのだが・・・。20cmほどのイワナを水に戻す。

その後も狙った場所では必ず反応があった。魚影は決して薄くはない。しかし、みな小型のイワナばかりというのが痛い。これでは小さいイワナをいじめているようで気分も良くない。その中でも唯一の1尾だけ良型を掛ける事が出来たのだがキャッチ直前にバレてしまう。流れのしっかりしたポイントで出たので、その様な場所を重点的に釣って行く事にした。

上流に移動するにつれ、心なしか水量が増え水通しが良くなってきていた。もう少し歩いてみよう。5分ほど歩いて更に上流に移動してみた。この辺りから水の流れに力強さを感じるようになる。午後5時を周り少し周囲が薄暗く感じるようになると、メイフライのハッチも見受けられる。そろそろ、勝負の時が近づいてきたようだ。

ハッチを意識してソラックスダンに換えてみる。風も止みキャスティングも順調。そして、ヒラキに投げ込んだフライに今までとは違う大きな水飛沫があがる。竿がしなる。久しぶりに味わう小刻みないい感触。ヒラキで結構走ったので遊ばれてしまう。良型かと思えたが実際は22cmくらいのヤマトイワナだった。2番ロッドなのでこのサイズでもかなり楽しめてしまう。ヤマトイワナのパーマークの模様をしげしげと眺め少し悦に入った。
次のヒラキでもやはり同サイズのヤマトが出た。完全にヒラキに出て餌を待ち構えている様子だ。たぶん、これからが面白くなるはず。アプローチは遠目から静かにフライを投げ入れた。型こそアップはしなかったが、ポンポンと期待通りにヤマトイワナが釣れてくる。この渓には混じりも多いはずだが今日はヤマトばかりだった。何故かシーズン終わりにはこの傾向が強い気がする。

魚が釣れだすと釣り登るペースが著しく遅くなる。振り返るとほとんど進んでいなかった。この距離でこれだけ出れば状況はかなり良い。目前にある落差のある落ち込み。水深もある。良型が付きそうな場所に期待は膨らむ。ソラックスダンでは浮力が心許ないので、エルクカディスにして白泡周りを叩いてみた。何投目かにボコっと出て、そのまま反転して潜った。結構強い。2番ロッドがギュンギュンしなっている。事前にティペットを5Xにしていたので、少々強引なやり取りも平気なはず。ロッドのバット部に手を添えて強引に流れから抜いてくる。25cmくらいの綺麗なヤマトイワナだ。もっと大きいかと思えたが、尾鰭がデカイののでその引きは十分納得できる。南アルプスのヤマトイワナらしい1尾だ。

大きな尾鰭が印象的なヤマトイワナ

辺りはだいぶ暗くなってきていた。遠くで鳴く獣の声が谷に響く。山の中で迎えるイブニング特有の緊張感。プールを見つけるとそこに波紋が立っている。ライズを狙うと8寸くらいのイワナが出た。ヤマトと確認してすぐにリリースした。時間が惜しかった・・・。

残り5分くらいか。目前には過去にも実績のあったポイントがあった。ここで最後の勝負だ。型は良くなってきているので、間違っても小さいのは出ないだろう。対岸にある大きな石の下にぶつかる流れ。その下が少しえぐれているのかいつも良型はそこに入っていた。少し回り込みクロスの位置でアプローチ。石のギリギリを流した。
スポっとフライが消えた。迷わずアワセを入れるとロッドティップがギュンと入った。動かなかった。根かかりか?、自ら上流に回り込みラインを手繰って近づいて行く。すると、一気に下流に向かって走り出した。ラインが力強く張った。手繰ったラインが石に絡んで動けない。慌ててラインを出し下流に走らせた。絡んだラインを外し、ラインを手繰る。まだまだ下流に走る雰囲気で力強く竿を曲げ込んでいる。下流のヒラキで押さえよう。そこまで一緒に下り最後の勝負で一気に寄せにかかる。更に下りたいようだが、ロッドのしなりで走りを押さえた。体高のある魚体が水面で暴れていた。暗がりとはいえヤマトイワナ特有のオレンジ色の魚体がまぶしかった。激しい水飛沫をあげて抵抗していたが、最後は観念したか静かにネットに収まった。
横たわる魚体はパーフェクトなヤマトイワナ。魚体がオレンジ色に輝いている。興奮していた。何尾釣ってもヤマトイワナの良型に出会うと心臓の鼓動は高鳴ってしまう。計測してみると29cmと残念ながら尺には届かなかった。しかし、それはこの魚体の前ではどうでも良いことの様に思えた・・・。

ヤマトイワナ
今シーズンを締めた ヤマトイワナ 29cm (パーフェクトな魚体)
※ クリックすると640x480サイズで表示します。

ファイトで余計な体力を使わせてしまったか。写真撮影は早々に水に戻した。この魚体ならば繁殖能力も高いはず。この渓で次の世代を担うヤマトイワナを残してくれ・・・。少し大げさかもしれないが、この1尾に希望を託したい。そんな心境で流れに戻る姿を追った。

決して良好な条件とは言えないこの渓でも素晴らしい魚体のヤマトイワナが泳いでいるという事実。ヤマトイワナを釣るたびに感じる危機感。しかし、今日は素直に喜びたい心境だった。人々から「幻のイワナ」など言われないように、釣り人の立場としてこれらを考えて行かねばならない。

暗い山道を戻りながら今シーズンの総括という訳ではないが、いろいろなシーンが頭を過ぎった。今シーズンは大きなアマゴも釣れたりはしたが、やはり私にとってはこうしてヤマトイワナが釣れる事がなにより嬉しく、大切なことの様に思えた。また来年もヤマトイワナにこうして遊ばれる事を期待して、竿を仕舞った。


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