2002.6.30「木々のトンネルを抜けて」


南アルプスの沢

釣行データ
日時 2002年6月30日(日) 8:00〜17:00
釣り場 南アルプスの沢
天候 曇り
気温 未計測
水温 未計測
タックル Rod    TIEMCO Bush Master 5'9" #3
Real   HARDY Marquis #4
Line   3M Ultra3 Yamame Line DT3F
Reader  AKRON Bush Master 5X-7.4ft
Tippet  VARIVAS 6X-2ft
釣果 イワナ 21尾(20cm前後〜15cm)
フライ #16アント、#15エルクカディス、#8クリケットホッパー

南アルプスには、私が入ったことのない沢がまだまだある。南アルプスの地図を眺めながら、この沢にはヤマトが居るかな?と想いを巡らす。実際、そんな沢に訪れてみると凄いブッシュ地帯だったりする。ヤマト探しにはショートロッドは必須だ。そう感じてショートロッド(ブッシュマスター593)を東京のショップに頼んでいた。釣行日の前日にロッドは届いた。よし、明日はこのロッドでブッシュ地帯に突入だ!。 翌日の早朝、ショートロッドを車に積み込み南アルプスの渓へと向かった。今日は3つほどブッシュな沢を回ってみるつもり。

最初の沢は入り口がわからず入渓に無駄な時間を浪費した。GPSを持ってきていれば1発だったのだが、今日は持ってきていない。やはりGPSは有ると便利だ。(重いけど)

どうやら沢の入口は木々に覆われていて、その細い流れを見失っていたようだ。けもの道というより、釣り人が通っている道を見つけ少し歩く。先行者はいないが、その道はけもの達も利用するのであろう。私はシカの足跡をたどるように沢音が遠くならない程度に沢と並行するように登って行く。
今日は雨が降るという予報だったがハズレたようだ。曇り空の隙間から日が差し込んできた。一汗かいて水を一飲む、ここから釣ってみよう。木々が沢を覆いトンネルの様に続いていた。隙間から差し込む日差しと緑のコントラストが実に美しく、もっと鬱蒼としたブッシュ地帯を想定していただけに意外な誤算だった。

竿を継いでみると5'9"がここでは短いとは感じなかった。急だったので専用のラインは用意できなかったが、リーダーは専用のブッシュマスターリーダーにティペットを2ft。フライはエルクカディスを結ぶ。ロッドを上では振れないので、横にたおしてのサイドキャストを多様する。川幅さえあれば8ftくらいのロッドでも平気なのだろうが、川幅3m弱となるとショートロッドの長さが効いてくる。こんなポイントのセオリー、腰をかがめてのストーキングで遡行する。

ロッドの感触もつかめ本格的に釣りに専念。時間は午前8時、イワナ達のちょっと遅めの朝食タイム。リーダーが短いだけにプレゼンテーションはピンポイントで静かに水面に置く。少しの間合いを置き狙ったポイントでバシャっと水飛沫。それほど大きくはなさそうだが、ロッドティップがギュンと入る。これがブッシュマスターの釣り味か、魚とのコンタクトが実に明確に手元に伝わってくる。フッキングも悪くない。しっかり乗った感触だ。上流に逃げるイワナを寄せてくる。初めて入った沢のイワナなので慎重にキャッチ。
ヤマトかどうかドキドキする。
あ〜背に白点が...。
YN型の混じりヤマトだった。この沢もか...。


まだ1尾だけでは決め付ける事は出来ない。Y型の完全なヤマトを求め更に沢を登る。入渓点は比較的おだやかな流れだったが、進むごとに険しさが増す。ラインは出せずティペットのみのキャスト。トラブルも増えてきたのでティペットは取り去ってリーダー直結とした。これなら幾分良い。イワナは飽きない程度に出てくる。いかにもイワナの着きそうな淵などポイントの一等地で出てくるイワナは20cmほど。良型が出ないのが不満だ。そして、みなYN型の混じりヤマトばかりだった。背鰭から尾鰭にかけて不明瞭な白点が浮き出ている。混じり度合いは薄いがニッコウ系のイワナとの混血状態にあるのは否めない事実。

「ここで引き返そう」という心の迷いと葛藤しつつも、上に行けば純血のヤマトがいるのではという思いは捨てきれず先を詰めていった。小さいイワナは釣りたくなかったので、大きなフライに切り替えた。8番のブラック・クリケットホッパー。これに出れば爽快だ。空気抵抗の大きなフライをリーダーの負荷だけでキャストするのはちょっとシンドイが、ストーキングで限界まで距離を詰めてポイントに落とす。バッシャンっと大きなフライに対しては出方が激しい。岩陰から静かにこの光景を見守る。ドキドキする瞬間だ。しかし、型は相変わらずでアップはしなかった。


3時間釣り登っただろうか。流れの感じからもっと大型魚がいてもおかしくないが、出るのは良くても20cmそこそこ。この沢のイワナが頭打ちなのは、抜かれているからだろうか。それにも増してなぜこの沢で混じりが釣れるのかが実に疑問だ。漁協のオジサン達がわざわざこの沢まで入ってイワナを放すとは思えない。そうなると有志による放流なのか? この沢で釣ったイワナ10尾は、いづれもYN型の混じりヤマトであった。(混じり度合いは薄い)

帰りは山の斜面に出来たけもの道というか釣り人の道というかをたどり戻った。完全なヤマトも釣れず、型も出ずと足取りは重い。この沢はまだまだ奥に続くがその先にヤマトは居るのだろうか? この沢は私の考えるヤマトの残る条件を備えていただけに、この結果に対する反動は大きい。

車まで戻り、次の沢へと移動する。今度の沢は、あまり期待はしていない。沢沿いに林道が走るので入れようと思えば放流は容易だ。道は悪路、ジムニーと軽トラしか止まっていない。釣り人は入っている。そろそろキノコ獲りの季節なので山に入る人もいるかも知れない。

堰堤を発見したのでその先から試しに釣ってみる事にする。堰堤上は土砂で埋まり広い河原になっているが、流れはその端を静かに流れていた。木々に覆われてはいるが、流れは静かで里の流れを思い出す。ストーキングが最も重要となる流れだった。
実際、不用意に遡行したためにイワナを数尾走らせてしまう。イワナは居る事は確認したので、あとは釣り上げてみるだけだ。雰囲気的にもあまり期待できそうに無いので、ヤマトというよりは単純に魚がいるかという事の興味が強かった。

腰をかがめて静かにポイントに接近。ヒラキに動く影をみる。さすがにリーダー直結という訳にもいかず、ティペットを足し、アントを使ってみる。魚影の少し上にポトっと落とすと間髪入れずに飛び出してきた。あまり大きくないがこの沢の初イワナなので慎重にキャッチ。ヤマトか?
ん〜背に白点が出ている。ヤマトの特徴の朱色の斑点も輪郭が少しぼやけている。やはり、混じりだ。先ほどの沢より混じり度合いは進行している感じ。

しばらく続いた静かな流れではイワナはヒラキに出ていてポツポツと釣れた。しかし、谷が狭くなり渓も険しくなりだすと魚影が乏しくなって行く。さきほどの区間はたぶん、餌師がやらないのだろう。険しい沢の渓相になると確かにここは過去ヤマトの渓であったという雰囲気となる。その流れなのに15cmくらいのイワナが釣れたりと完全に枯れた渓になるのが残念だ。それでもフライを木に引っ掛けるつもりで無理して厳しいポイントに入れると、20cmちょいくらいのは釣れてくる。流れ的にはさきほどの沢と大差ない。上も横もブッシュがあり、キャストは困難だったが、不思議と釣りが成立している。振り返って自分の釣り上がった渓をみると、よくこんなところ釣っているなぁと感心してしまう。

上流に進むにつれ、イワナの混じり度合いは薄くなってきた感じ。そんな中、淵のヒラキで釣れたイワナは、待ち焦がれたヤマトだった。背には白い斑点がない。期待はしていなかった沢だけに嬉しい1尾だった。

ヤマトイワナ

背に白点がない ヤマトイワナの特徴

この沢では結局、3時間ほど釣ってみたが9尾のイワナを釣った。ヤマト1尾を除き、あとは混じりヤマトであった。型も出ない状態は前の沢と同じ。釣獲による固体の小型化、イワナの混成化。ヤマトが釣れたといっても私にとっては魅力的な渓には思えなかった。

まだ時間があったので、別の沢へと移動する。ちょうど、一山先の谷になる。この沢は以前訪れた事があった。釣りこそしなかったが、多少の勝手は知っている。車を置いて徒歩で山道を登った。以前来た時チェックしたポイントが見えてきた。沢に降り立つと山道で見た以上に木々が鬱蒼と生い茂り、今日釣ってきた沢の中でもブッシュ度は高かった。しかし、渓相が私好みというかイワナが居そうに思えたので期待は膨らむ。

少し様子を見るように釣ってみるがイワナは出ない。直結リーダーもどんどん短くなって今では6ft半くらいになっていた。
ティペットを足したいのだが、このブッシュでは引っ掛ける可能性も大きいので、キャストを駆使してなんとか釣りをする。

堰堤の様に段差のある石、そこから落ちる流れが淵を作っていた。なにか釣れそうな雰囲気。フライを静かに置いてみると、魚影が動く。しかし、フッキング直後にバレる。もう出ないだろうと半信半疑でフライを置いてみると、またしてもイワナが飛び出してきた。久々に貪欲なイワナの性を見た気がする。この沢のイワナはどうだろうか? 朱色の点は綺麗にでてはいるが、ここのイワナもやはり、混じりのYN型だった。

先ほどの沢の例もある。上に行けばもう少しヤマトが出るかもしれない。そう思い沢を登って行く。良さそうなポイントは多いがこの沢は魚影が薄い。2尾目は30分後くらいだった。しかしこれもYN型の混じり。まだ時間はあるので、先を詰めるべく登るがそんな時、ちょっとしたトラブルが...。
木の枝に引っ掛かったフライを回収しようとした時、勢いあまって左手の親指にフライを刺してしまった。エルクカディスは102Yで巻いていたので、バーブが皮膚の中へ。抜こうにも全く抜けない。フォーセップで思い切って抜いてみようとしたが、気が遠くなりそうな激痛が走り抜けなかった。しばらく、悪あがきをしてみたがどうにも手におえないので、これは医者に行くしかないと決め込んだ。渓流ではバーブレスの出番の少ない私だが、この一件でバーブレスフックの使用を痛感させられた。

針が刺さった直後も釣りをしていた。錆びた針ではないので、ピアスと思えば大したことはない。そして、夕方に近づきイワナの反応は良いのもあった。しかし、時折刺さったフライにラインなどが触れると激痛が走る。やはり、釣りは諦めよう。3番目の沢は満足な探釣は出来なかったが、また次回という事で納竿とした。

今日のヤマトイワナ探釣は、満足の行く結果ではなかったが、自分の中でのブッシュの釣りの限界は越えられた様に思う。今まで敬遠していた藪沢も今思えば、全然余裕に思えてならない。ショートロッドは私に釣りの幅を与えてくれたのだ。ヤマトイワナに関しては、自分の思っていた以上に現状は深刻になってきている。毎回、ヤマト探しをする度に感じる虚しさは今回も同じだった。先週のヤマトの渓は魚影は濃いとは思えなかったが、今思うと、やはり貴重な「ヤマトの聖域」と呼んでも良いかも知れない。時折、指にうずきを覚えながらも帰りの車中でそんな思いをめぐらしていた。


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