2000.9.10「源流からの流れ」


南アルプスの秘境と呼ばれる村を流れる沢。
長い流程を経てここまで辿りつく。
渇水気味で川全体が茶色くなっているのが残念だ。

釣行データ
日時 2000年9月10日(日) 14:00〜16:00 / 16:45〜17:30
釣り場 南アルプス 某沢
天候 晴れ / 曇り
気温 未計測
水温 未計測
タックル CFF RightStaff 8'4"#2(4P) + Koh-I-Noor #0 + DT2F + REVIEW 5X-9ft
ハッチ 特になし
釣果 計13尾(イワナ 8尾 / アマゴ 5尾)
フライ #18 アント・パラシュート / #13 エルクヘアカディス


渓流シーズンも残り1ヶ月を切ってしまった。この時期になると妙に各地の渓が気にかかり、自然と今年まだ釣っていない渓に足が向いてしまう。日曜日の午後、時間が空いたので、南アルプスの山頂付近を水源に持つある沢に出向いてみた。ここへは、毎年1回程度しか訪れる事はない。そもそも、ここ来るには、クネクネの峠道を越えなければならず、その行程がかなりしんどいというのが理由の一つだ。言葉を変えると「秘境」と云えるのかもしれない。

そんな訳でか、日曜日というのに釣り人の影はまばらで、この沢の下流域に午後2時に到着したのだが、周囲や川筋を見まわしても先行者の痕を感じなかった。川は酷く渇水していた。夏場の水温が高かったと見え、水底にまで茶色いコケがびっしりと生えている。この沢は、沢と名のつく割には、長い流程を経てここまで流れる。その為、水温も上昇してしまうのであろう。
期待していたこの沢での釣りであったが、この流れを見て少し気が抜けてしまう。とりあえず、2番タックルをセットし、8Xのティペットに18番のアントという少し繊細な仕掛けにしてみた。

様子見で丁寧に流れを釣りあがる。流れの中からは、小さいながらも元気なアマゴが飛び出した。日中でもヒラキで餌を待ち構えるということは、先行者の形跡はなしといえる。ポイントを小さく区切り、きっちりとフライを流す事を心がけ釣り上がる。それに応えて、流れの筋からアマゴが果敢にアタックしてくる。小さいながらも朱点がアマゴを主張する。30分ほどで5つ釣っただろうか、この辺りから、少し山岳渓流の渓相に変わり出す。通例では、この辺りからイワナが出始める頃だ。

茶色いコケが水底に張っていると、意外と魚が良く見えるもので、静かに寄って行くと魚が流れに身を置き餌を捕食しているのが見えた。こういう魚は、やる気満々。大抵、1発で釣れるものだ。ただし、ポジション取りだけは慎重にしないといけない。
ポイントとの距離、着水位置、ドリフトさせる筋、すべてを頭の中にイメージしそれを実行に移す。魚の定位する50cmちょい上の位置にU字キャストでフライを落とす。あまり上流からドリフトさせると、魚が食う頃になってドラックが掛かり始めるので不必要なドリフトはしない。また、流れもあまり速くないので、魚もじっくりとフライを見る余裕がある。特にイワナは、一旦見送って、後ろから食いつく事もあるのでポイントの最後まできっりち流す必要があるのだ。
数回のフォルスキャストの後、おおむねイメージした位置にフライが落ちた。魚がすーっとフライに近づく。しかし、いきなりフライを口にしなかった。少し見送って後方からフライを襲った。イワナだ!。キャッチしたのは、20cmほどのイワナで特筆すべきもないが、フライフィッシングらしい気持ちいい釣り方で、気分も良くなる。

この後は、イワナゾーンに入ったらしく立て続けにイワナがヒットした。ここはと思えるポイントでは、大抵イワナとのコンタクトが得られ、けっこうハイペースに釣果を伸ばした。ただし、大抵は20cm前後のイワナばかりで少し物足りなさも感じなくはない。

約2時間ほどで堰堤下付近に到着。堰堤の少し下にある大石の影には、いつも大物が潜む事が多い。このポイント最大の大場所である。ティペットのチェックも施し、フライも新品のアントに換え、少し離れた位置からポイントへフライを打ち込んだ。流れ込む筋に上手くフライが乗った。しばらく置いて、静かな波紋が立った。バシャっと来るのをイメージしていただけに、少し疑心暗鬼しながらロッドを立てると、バシャバシャと激しい水飛沫が上がる。今までのよりはサイズがいいか?。
淵の中を走りまわった後、ネットに納まった。ん〜もう少し良い型を想像したが23cmほどのイワナであった。

堰堤までを釣り登り、この沢を終える事にした。型は出ないまでもイワナを7尾のアマゴを5尾と数はまあまま。しかし、物足りなさは否めない。

時間は午後4時を回った処、実はこの沢のかなり上流に入る事ができそうな怪しい道を発見し、その道を登ってこの沢の上流を探索してみようと思っていた。予想以上に遠く、車でも30分ほどの山道を登る事となった。沢筋は遥か下を流れ、果たして、この道の先に沢へとの辿りつくことが出来るのか、実に不安であった。しかし、実際にたどり着いてみると、かなり流れの近くまで道がついている事に気が着く。今まで何度も地図を見ていながら気が着かなかった上流へワープする道。これを発見したのは、今日の最大の収穫か?。
沢へ降りるまでは少しの歩きを要するが、堰堤工事の為の廃道が残っておりそれを辿れば意外にも容易に川へと降り立つ事が出来た。言い返せば、入渓も容易で釣り人も入り易いという事か?。先行者がいるか不安になりながらも川に降り立つと、河原に残った足跡は鹿などの獣のものばかり。熊の足跡はなさそうで一安心。おそらく、しばらく人は入っていない様子である。もしかして、ここって穴場?。そう思えるとラインをガイドに通すのも焦ってしまう。

浅い瀬が続く。どんなイワナが飛び出すかとドキドキしながらフライを流すが、まったく反応がなかった。しばらく釣り上がると途端に谷が狭くなり、大石がゴロゴロと点在しかなり豪快な山岳渓流の渓相に変わり出した。この沢は、ここからが本番なのだ。しかし、既に午後5時半近くなり、薄暗くなり始めていた。戻る事も考えなければならないので、あまり奥まで入るのは止めよう。少しこの先の淵まで釣り上がり、今日の探釣は終わりにしようと思った。この辺りは、下流のようにコケなど生えていない。青々とした沢水が豪快に淵と淵を1本の筋で結んでいる。イワナ釣り好きには最高の流れ。浮力のあるエルクヘアカディスを落ち込みの脇に叩く。何度か叩いていると、ボコっと吸い込まれた。ゴンゴンと振動が来て、下流に走った。その下のヒラキでネットに納まったのは、23cmほどのイワナだった。もう少し大物を期待したのに少し、ガッカリだ。

まあ、この1尾は明日につながる1尾である。そっと水に帰した。背中から地図を出す。おそらく自分はここにいる。そうなるとこの沢の奥はまだまだ深い。この沢にも昔はヤマトイワナがいたはずだ。しかし、度重なる水害でその種は途絶えてしまったかもしれない。実際、こうして釣れるイワナは、漁協、あるいは有志が放流したニッコウイワナばかりである。混血とおぼしき個体すらいない。私は、この渓では、既にヤマトはいないと思っていたが、この沢の奥深さを知ると、もしかしてこの源流からの流れの先には...?。という希望も見えてくる。この沢の奥を見てみたい、そんな想いを引きずりながら、この沢を後にした。


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