夕方から降り始めた雨が、夜半から強まり明け方まで集中的に降ったようだ。早朝の渓に向う林道脇を流れる川の水はひどい濁り。流れもかなり強いものとなっていた。普通、このような状態ならば釣りはしない。休日にしては釣り人も少なかった。この状況なら、砂防堰堤でストリーマーの1発大物狙いに走るしかない。私の車は、いつもの砂防堰堤に迷う事無く向っていた。
砂防堰堤に午前5時を回ったころ到着。ここもひどい濁りで、いつもの透明度は全くない。既に先着の餌釣り師2名が竿を出している。話を聞くとさっぱりだそうだ。まあ、この状況なら当然であろう。私も支度を済まし流れ込みに立つ。といっても今日の流れ込みは、ガンガンの流れでとても流芯に立てるものではない。流れの脇に立つ事にした。増水した事もあり流れ込みの状況がいつもと違う。流れが複雑で巻いているようだ。
今日は、オービスのラインバスケットを試しに使ってみることにした。流れ込みに立った際にリトリーブしたラインが流されてしまう事を防ぐ為に購入したものである。このラインバスケットは通常のものとは違い、完全な箱であり、その中に5〜6cmほどのツノが9本生えている。このツノが大変重要で、ラインの絡みを防止する効果が期待できる訳だ。今日みたいに複雑に巻いている流れの中に立つ際は、足元にラインを垂らすとラインが流れに巻きこまれてしまい、キャスティングが困難なものとなるが、このラインバスケットならば、そんな心配もない。このラインバスケットのデビューにしてはうってつけの状況であった。
ある程度ウェーディングし、キャストを開始。カウントダウンで待っているとランニングラインが巻きこまれ流れに持って行かれる。もう少し早いシンクレートのラインにしたいが、タイプ3、タイプ4の換えを持ってきていなかった。タイプ2で待つしかない。フライは派手目のストリーマーでアトラクターの反射食いを誘うしかない。高速リトリーブを繰り返した。
ラインバスケットの調子は、なかなか良さそうである。たまにラインも絡むこともあるが、さほど問題になるほどでもない。試しにとラインバスケットを使わずにやってみたが、リトリーブしたラインが流れにもまれ、次ぎのキャストは、半分くらいの飛距離になってしまった。ラインバスケットの効果はあるようだ。
もうかれこれ2時間、全くアタリが無かった。餌釣りの人も諦め竿を仕舞っていた。私は、朝食などをとり、状況の変化を見守った。3時間も経つと、水位がだいぶ下がったようだ。流れ込みの状況が変わってきて、地面もだいぶ見えてきた。ライズもポツポツとし始め、これからがチャンスか。カウントダウンは無しにして高速リトリーブに徹し、表層にいるやる気のある奴に的を絞った。
しばらくして、今日はじめてのアタリがゴツんとあった。しかし、テールのマラブーをかじったのか乗らない。少しやる気も出てきた。リトリーブにも気合が入る。少しリトリーブのスピードを遅くした時にラインに変化が。乗った事はすぐにわかったがたぶん小さいと思う。全然竿も曲がらず、15〜16cmほどのイワナだった。しかし、でかいストリーマーをよく食ったものだ。どうやら、表層でたまにライズしているのはこんな小さな奴なのかもしれない。今日は駄目だな。やっと諦めもついた。午前9時頃、竿をたたんだ。
まだ少し時間があったので、この川の上流の様子をみて見ようと思った。この川の上流は、たいへん濁りにも強く、他の河川が増水濁りであっても、ここの上流に限っては、増水はあるものの濁りも薄く釣りが出来た事が今までにも何度もあったからだ。林道をゆっくりと川の様子を見ながら走る。上流に行くにつれ、濁りも薄らいで行くようだ。釣り人はあまり入っていない様子。数台の車しか見ない。
いつも釣るポイントに来た。ここでも水はかなり多いが、濁りはかなり薄らいでいるようだ。これなら釣りが出来る。この後、用事があるので、残り30分ほどしか釣りが出来ないが、30分に賭けてみることにした。この状況なので迷わずニンフを選択した。普段は穏やかな流れのこのポイントも今日は、流れが速くインジケータのドリフトも容易ではない。早い流れにはいないと思われるので、脇の弛みや緩い流れを中心にニンフを流す。岸沿いの石の影に小さいイワナは隠れているようだ。不用意にに近づくとささっと魚影が走る。
張り出した木に覆われた下にいつもは小さなイワナが群れているポイントに来た。今日は水も多い事から実にニンフを流すにはちょうど良い流れに見えた。ここでの最有力ポイントである。1投入魂ではないが、ここのポイントに賭けてみる。木の枝に引っ掛けないようにサイドキャストでポイントに入れる。
インジケータに小さなイワナがアタックした。いるいる。何投か粘った時、沈み石の脇でインジケータが止まった。完璧なアタリだ!。疑う余地もなくスパンとアワセを入れる。ラインが張り、魚の生命感を感じた。実にいい引きだった。3番ロッドがしなった。強い流れに入られ下流に下った。自分も下流に下りつつ緩い流れへと誘導しネットでキャッチ。ナイスサイズの26cmイワナだった。腹がパンパンだ。おそらく、小石などを腹に入れ重くして増水に備えていたのであろう。写真に納め水に戻した。
まだ時間はあるが、もういいかなという感じ。自分の思い描いた展開が出来た訳だしもう充分な満足感を得られた気がする。今期の中でニンフによる会心のアタリだった。里では桜が満開だというのに、まだ南アルプスの1300m付近の渓では、ドライフライはもう少し先のようだ。
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